考の証

要は健忘録

【積読日記】B.C.1177 古代グローバル文明の崩壊

 今回読んだのは紀元前の古代オリエントにおける文明に関する本である。なぜ古代オリエントに関する本を読もうと思ったのかというと、日本含めて世界史などは高校の授業で習っただけであって詳しくないことや、そもそも最初の文明がどのようなものだったのか知らなかったことがある。この本を購入するときはたまたまそういった気分で古代オリエントに関する本で面白そうなものを本屋で探し、色々眺めた結果手に取ったのが本書籍である。

 古代オリエントとは、今でいうエジプトやシリア、イラン、イラクといったアジアとヨーロッパの境目あたりの地域に起こった古代文明のことを指しており、四大文明エジプト文明メソポタミア文明のあたりである。主要な国といえば、言わずとしれたエジプトやバビロニア、それに加えて鉄器や戦車で有名なヒッタイトやミタンニ、ギリシャクレタ島のミノアやミュケナイなどがある。

 この本を手に取った理由としては、書名に「古代グローバル文明の崩壊」とあったのが一番の理由であった。というのも、あまり歴史を勉強してこなかった身としては古代の文明とは現代とは異なり閉じた文明で他の国々と深い交流があるとは思っておらず、古代においてもグローバルな文明があったのかと気になったからである。本書籍はこれら古代オリエントの国々が次々滅んでいった紀元前12世紀で何が起こったのかを考察するため、紀元前15世紀からそれぞれの文明・国の興りや文化、相互の関わりなどから述べられている。
 特に驚いたのは、各文明・国の王が互いを(血縁関係の有無に拘わらず)父・兄弟と呼び合って親交を持っていること、それに加えて金や銅、錫のような金属、象牙や宝石のような宝飾品、そして穀物やワイン、織物のような消耗品の交易を行っていることであった。また、これは陸路だけでなく東地中海の海路においても同様のことが行われていた。それに加えて、当時はもちろん国同士の争いも起こっていたが、敵国を支援している国への物の輸出を禁じるような禁輸措置を行っていることも発掘された粘土板から分かっている。このような複数の国にまたがる交易、また利害関係のよる輸出入の制限ということが3000年以上前にも行われていたという事実には驚いた。

 本書は上記のような古代グローバル文明の説明から入っていくため、それぞれの国王や年代が頭に入っていない素人では流し読みするしかなかったが、それでも大まかな時代の流れというものを理解するには十分すぎる内容となっている。また、なぜ同時期に次々とこのような文明が崩壊してしまったのか、ということについては正直少し歯切れの悪い終わり方とはなってしまったが、既に人類はグローバル文明の崩壊を体験しており、この体験を考古学によって掘り起こすことは私たちの現代の悩みに対しても有効であるかもしれないと感じた。