考の証

要は健忘録

【映画】キングスマン ファースト・エージェント

 映画はこれまでも時折見ていたが、久し振りにブログ更新という形で感想を書こうという気になった。

 キングスマンは1作目、2作目ともに映画館で見ていた。1作目はその不謹慎さからB級映画臭のしている一方でアクションシーンが素晴らしく、教会でのコリン・ファース演じるガラハッドと凶暴化した市民の戦闘シーンなど圧巻であった。2作目は個人的には微妙な要素が強く、1作目の雰囲気を引きつつもストーリーもジョークも正直好みではなかった。

 そういった訳で、3作目にあたるファースト・エージェントはあまり期待せず見に行った。いつものごとく前情報0で見に行ったのでキングスマン設立前の話であるということ程度しか知らず、上映開始ともに20世紀初頭が舞台となっていることを知ったくらいである。

 さて、本作は前述のごとくアーサー王と円卓の騎士を自称する諜報組織であるキングスマンの設立を描いたものであるが、キングスマンらしいシーンというものは尺の半分程度であった。では、残り半分の尺は何かというと戦争映画である。本作の時代は第一次世界大戦に突入した時代であり、物語はフェルディナント大公の暗殺(サラエボ事件)から始まっている。コンラッドは軍入隊を志願して一兵卒として国のために戦うことを望んでいる一方で、父親であるオーランド公爵はそれを認めていない。第一次世界大戦は人類初の総力戦であり、それはこれまでの戦争とは大きく異なっていた。兵士は誇りなどなく無数に消費される銃弾のような資源であり、そこに個人は存在していない。だからこそオーランド公爵はこの戦争に誇りなどはなく、ただ数字として消費される兵士となることは国の為に戦うことなどではなくただ死ぬだけなのだとコンラッドを諭す。実際、合図と共に塹壕から飛び出して敵へ向かう英国兵が敵対するドイツ兵の機関銃で何もできずに全員殺されるシーンがあり、まさにその数字として消費されていく姿が描かれている。また、キッチナー将軍が途方もない死者数が書かれた電報を読むシーンがあることからもオーランド公爵の言葉が繰り返し描かれている。
 しかし、最終的(映画ではまだ中間辺りだが)にはコンラッドは19歳(入隊できる年齢)になって入隊、ロンドンへ戻れる機会も替え玉でやり過ごして前線へ向かう。ここでコンラッドはドイツへ潜入していた英国のスパイを自陣に連れ帰り、戦争終結の鍵となる情報を齎すことになるのだが、不幸なことにこの前線で亡くなってしまう。
 この一連のシーンはかなり暗く重いものとなっている。まるで別の映画を見ているかのような錯覚すら覚え、キングスマンの不謹慎さなどは全くなかった。また、私は主人公であると思っていたコンラッドがまさかここで戦死するというまさかの展開に驚いてしまった。「コンラッドキングスマンを作るんじゃないんだ!?」と思いつつ「今映画始まって何分経った?残り何分?」とか時間から作劇を予想しようという悪い癖も働いてしまうほどだった(なお、腕時計をしていなかったため分からなかった模様)。
 ただ、このコンラッドの物語というのはそれだけを抜き出しても非常によくできたものであったと思う。戦争の暗さ、兵士の命の軽さ、大戦の異常さ、その中でも人間性を失わずに生きようとした人、そういったものをうまく描けていた。また、本作のメッセージとして反戦が挙げられると思うが、このコンラッドの物語は、平和を願いその平和を勝ち取る為に戦うというオーランド公爵の決意とキングスマンの設立経緯という物語の根幹へと繋がっていくため、そのメッセージ性も浮かずにしっかり溶け込んでいたと感じた。

 これまで書いた内容を見ると、今回の映画はかなりエンタメ性が控えめと思われるかもしれないが、他のところではよく表れているのでこれまでのキングスマンが好きな人もしっかり満足できるものになっていると思う。この大戦には裏から英国を滅ぼそうとする組織がいるのだが、その組織にはグレゴリー・ラスプーチンウラジーミル・レーニンマタ・ハリ、ヘリック・ハン・ヤヌッセンなどが所属しており、史実を知る人からしたら仰天するようなメンツがそろっている。しかも、結局この組織は壊滅はせず一部は生き残っているのだが、ラストにはヘリック・ハン・ヤヌッセンがウラジーミル・レーニンに対してアドルフ・ヒトラーを会わせている。この無茶苦茶さはキングスマン特有のものといえるだろう。
 また、戦闘シーンでもキングスマンらしさが表れている。ラスプーチンとの戦闘シーンではただの白兵戦ではなくラスプーチンが踊りながらオーランド公爵やコンラッド、ショーラをそれぞれ撃破していくというのは思わず笑ってしまった。また、ラストバトルのオーランド公爵と敵組織の首魁との戦闘はまさにキングスマンらしい迫力ある素晴らしい戦闘シーンであった。それに加え、オーランド公爵が使う小道具たちは後のキングスマンの特殊装備につながっているという要素もあり、過去作を見ているファンにとってはニヤリとするような要素もある。

 久しぶりに色々書こうとしたため、取り留めのない感じになってしまった。またどう終わるべきか、どう締めるべきかを全然覚えておらず悩んでいる。まとめるとファースト・エージェントは過去作を見た人でも面白い一方、見たことない人でも十二分に楽しめる作品であったということで、今回はここで終わりたい。