タイムパラドクスゴーストライターとは何だったのか ~未来編~
これまでタイパラについて振り返ってきました。
まず初めに、タイムパラドクスゴーストライターについて各話で何を読めばよかったのか、作中描写のみを頼りに読み進めてみました。ここでタイパラ自体の物語についてはおおよそ理解できるかと思います。
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次に2つの過去作、ぼくらのQと試作神話から作者がこれまでどのような物語を展開してきたのを振り返り、タイパラとの共通項を見出すことが出来ました。
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そして今回の未来編では「タイムパラドクスゴーストライターは長期連載となった時、どんなストーリーとなったのか?」という難問に取り掛かりたいと思います。というのも、これは連載時から散々言われてきたことですが、タイパラはその物語の性質から長期連載に不向きであり、一体全体どのようなストーリーとするのだろうかと幾度も疑問が投げられかけてきました。そこで今回はこれまでの情報を統合して、私なりのタイムパラドクスゴーストライターを書いてみたいと思います。
物語の前提
①キャラの立ち位置
主人公 ⇒ 平凡である佐々木君*7
超越存在 ⇒ フューチャー君
ヒロイン ⇒ 藍野伊月
②物語
主人公である佐々木君が非日常的な事態に巻き込まれて超越存在と出会い、理解してヒロインを共に救いに行く
③補足
フューチャー君は佐々木君、ないしジャンプ妖怪おじさんに関連するキャラクターであり、藍野伊月とは無関係である(試作神話のような「ヒロイン=超越存在」ではない。またフューチャ君の時空間干渉権限はほぼ全能である。
上記前提はタイパラでの作中描写の他、過去編でまとめたぼくらのQと試作神話での物語から考えています。
物語の分岐点
打ち切りに入った分岐点は10話です。9話目では佐々木君と編集で「このホワイトナイトならANIMAに勝てるかも」という期待感を持って次回に臨んでいました。ここで打ち切りに入らなかった場合、佐々木君のホワイトナイトは本当に藍野伊月のANIMAに勝ちます。一方でこの方法では藍野伊月の死の源流は遠ざかるどころか、輝きをなお増して藍野伊月を取り込み始めます。なぜなら、ホワイトナイトは10年後のアイノイツキが目指した『透明な傑作』であり、佐々木君がアイノイツキの模倣の精度を上げれば上げるほど藍野伊月の思想をより強固なものとして形作ってしまいます(3話で見ましたよね)。これが本来の10話です。
その後の物語
それ故にそのまま藍野伊月は死の源流に呑まれて死んでしまいます。それはアシスタント先が佐々木君から藍野伊月へ替わった赤石君から佐々木君は「最近の藍野がおかしい」ということを聞いて「なぜホワイトナイトでANIMAに勝ったのに。」と焦り始めた矢先でした。ここで藍野伊月側の描写は連載10話にあったような詳細な範囲まで描かれず、なぜかは分からないが死んでしまったとしか読者には分かりません。そして佐々木君はフューチャー君に「なんでお前の言った通りにホワイトナイトでANIMAに勝ったのに藍野さんは死んだんだ!」とブチギレます。そして冷蔵庫に呑まれてフューチャー君と対話を始めました。
フューチャー君は佐々木君に「君は藍野伊月の同類であり、だからこそ君に託した。そしてそれは成功したが、それでは藍野伊月を救うことが出来なかった。」「これまでの世界線で最も上手くいったのは君に託したこの世界線だ。」「藍野伊月は夢を追うが為に死んでしまったが、なぜ彼女が死に至ったのか、同類である君には分かるか。私には心がないから分からないのだ。」とか言います。そして佐々木君は「藍野伊月との同類」というところに引っ掛かりを覚えます。本当に自分は藍野伊月と同類なのか。それを確かめるために佐々木君はもう一度ホワイトナイト読切掲載後に戻してくれとフューチャー君に頼みます。そうして帰還した第3話。改めて藍野伊月との初めての出会いをやり直した佐々木君は同じ問答をして、本当に自分が藍野伊月と同類かを確認しますが、確かな答えが得られませんでした。その後、家に帰らずに公園に立ち寄って「藍野さんはなぜ死んだのだろう」「そもそも夢を追って死んでしまう彼女の夢を奪うことは正しい事なのか」などと悩んでいるとそこに謎の美女が現れました。
なんと謎の美女は佐々木君の師匠の七篠権兵衛先生(イメージ:ぼくらのQより女刑事・星龍院茉莉花を参照のこと)でした。とりあえず佐々木君は「辛気臭い顔しやがって」という理由で七篠先生にブン投げられます。その後、佐々木君の悩み相談会となって「僕は漫画でみんなを楽しませたいと思ってました。」とかかつての自分の夢を先生に話してみると「お前の描く漫画はつまらんかったけどな、がはは!」とか笑われて地味にダメージを食らっていきます。そして、「夢を追って死ぬのは幸せなんでしょうか。」と藍野伊月を思いながら七篠先生に聞いた瞬間、また佐々木君はブン投げられます。「んなわけねぇだろ!死ぬことが幸せな人間なんてこの世にはいないし、いちゃいけねーよ!」みたいな熱血論を浴びせられた佐々木君は藍野伊月を死なせないことは間違っていないと気付き、必ず救うことを誓います。また七篠先生は「お前の漫画はつまらんかったけど、好きな漫画を描いているときのお前は楽しそうだったよ。」と言葉を残して去っていきます。
七篠先生に活を入れられた佐々木君。かつての自分は「漫画を描くことが楽しかった」ことを思い出しました。「みんなを楽しませる漫画」を描こうとしていたのは、たくさんの人に楽しんでもらえれば、その声で自分が幸せになれるからでした。昔はその「みんな」が小学校の友達でしたが、いつしか「みんな」は見えない誰かになってしまっていたから何も生み出せませないことに気付いた佐々木君は、まずは目の前にいる編集やアシスタントを楽しめるようにとホワイトナイトのネームを見せてどう物語を作っていくかを相談しながら作品を創り上げていきます。そして2週目の世界線でのホワイトナイトはまた違った面白さを持つ作品として人気連載漫画の地位を築きますが、その一方で藍野伊月は1週目世界よりも佐々木君との距離が開いてしまいました。
距離が開いてしまったことに焦った佐々木君は距離を詰めようと藍野伊月を映画に誘ってしまいます。ちなみにここで赤石君は滅茶苦茶動揺してしまい、それを見て佐々木君はこれが「デート」であることに気付いてしまいます。お待ちかねのデート回ですね。当日も藍野伊月は制服姿で来ていて何となく気まずい雰囲気で映画を終えてしまいます。これでは何も距離が縮まらないと悩んだところに、七篠先生が颯爽登場。ひとまず佐々木君をブン投げた後に藍野伊月を可愛がって「制服しか持ってないんだったらコイツが買うから好きな服を買え」と言います。着せ替え人形のごとく扱われた藍野伊月ですが、なぜかその親分肌に惹かれて七篠先生に懐きます。その後、3人でご飯を食べているときに、七篠先生は以前佐々木君が悩んでいた原因が目の前の藍野伊月にあると気付きます。余計なおせっかいを焼いていると藍野伊月が透明な傑作の理論について話し始めました。
透明な傑作について聞いた七篠先生は「そんなもん描いて何が楽しいんだ。自分が楽しくなきゃ意味がないんだよ。」と一蹴します。それを聞いた藍野伊月は涙を流しながら怒って飛び出してしまいます。七篠先生は佐々木君に申し訳なさそうに謝りますが、「それでも自分を押し殺して描く作品なんて描いてはいけない」と藍野伊月に伝えるように言います。そして佐々木君が伝えようとした次の日、藍野伊月はアシスタントを辞めて作家業に専念すると編集から伝えられます。昨日のデートで何かやらかしたんじゃないかと赤石君たちから疑いの目を向けられる佐々木君ですが、そこは深く掘り下げれられません。佐々木君は良い人なので。
そうして意固地に透明な傑作論を信じる藍野伊月との戦いが始まる…!
幻覚の限界
これくらいしか今のところ先を見通せませんね。まあこの後の展開はどれくらいアンケ取れるか次第でもう自由にできそうです。
まあひとまずのところ、1週目世界でホワイトナイトで勝つことが藍野伊月を生かす条件でないことに気付き、その後の2週目で藍野伊月のパーソナリティーを掘り下げていくストーリー展開となっていたんですね。この2週目にて1~7話目までの読者の引っ掛かりや疑問点を回収していくとともに藍野伊月を前面に押し出していくことでアンケを爆取りですよ。
やり直した世界でも佐々木君はホワイトナイトを描き続けるしかありません。ホワイトナイトだけが佐々木君と藍野伊月を繋げる接点であるからですが、このホワイトナイトでは藍野伊月を救えない。そういった二律背反を解決するために、佐々木君はホワイトナイトを変えて連載していきますが、きっとどこかで限界を感じて新作を描き始めたはずです。それはホワイトナイトの読切掲載後かもしれませんし、ホワイトナイト連載時の同時連載させたりするかもしれません。また時間が足りないのであればフューチャー君に協力してもらえば問題ないでしょう。最終話の形式が変わることはありませんから、そこに着地できるようストーリーを膨らませていけばよさそうです。
ここで思い出しましたが、フューチャー君の絡みを全然考えていませんでした。こいつを絡ませる方法ってなかなかないので、どうしたらいいのかわかりませんね。それに加えてフューチャー君の先に見えるジャンプ妖怪おじさんをどうやって絡ませるのかは全くもって分かりません。ぼくらのQであったように、藍野伊月を救った先に待っているのがジャンプ妖怪おじさんであり、そこで禅問答するかもしれません。まあ打ち切りになったがために出した特別な存在である可能性も否定できないので何とも言えません。
本当の未来編、2巻のアフターストーリー
ところで最近2巻にアフターストーリーの描きおろしがあることが分かりました。正直、これ以上どういった物語を展開するのかはわかりませんが、佐々木君や藍野伊月、アシスタント3人衆や菊瀬編集が描かれるかもしれませんね。
最後のタイパラ予想をしてみます。藍野伊月の結婚相手は赤石君で、物語の最後のコマはこれだと思います。
最後のページはジャンプ妖怪おじさんが「よし」みたいな言葉を話して、タイパラ最終話原稿(佐々木君と藍野伊月が笑っているコマ)の上にGペン置いて「〜fin~」だ!!!
— 下弦のMCXXI (@McxxiQua) 2020年8月11日
タイムパラドクスゴーストライター 2 (ジャンプコミックス)
- 作者:伊達 恒大
- 発売日: 2020/10/02
- メディア: コミック