考の証

要は健忘録

【積読日記】ユニクロ

 この1年間は仕事、私生活ともに忙しく、とてもじゃないが本を読む時間を作れずにだらだらと過ごし、いつの間にかXとなっていたTwitterもただ見るだけとなって更新することが絶えていた。そんな中、周りの人も忙しいはずなのに色々と勉強したりしている姿を見ると、忙しいと言い訳しながらもダラダラとスマホを触っているのがダメだなぁと思いながら最近は本を読むように心掛け、そしてついにブログを更新するに至った。そうは言いつつ、英語の勉強を後回しにしているので、何かを犠牲にせずにすべてをこなしていくのは大変だと実感している。

 そんな中、夏季連休に入る前から読み始めたのがこの本だ。

 元々、本屋に行ったときに目を引く表紙であったので本自体は認知していたが、そこまで柳井さんに好印象もなくスルーしていたのだが、Xでバズっていた1ページを見て興味をそそられて購入した。思考回路がインターネットに接続されすぎている。

 こういったノンフィクション、特にビジネス関連のものは今まで読んだことがあまりなかったが、これはこれで面白い読み物であった。柳井正という人間を、記者の目から見て人生を再編しているため、ノンフィクションといいつつ一種のフィクションに近い読み味がある一方で、それなりの客観性を持った記載となっていることからかなり読みやすい。ただ、柳井正ユニクロを題材にするには500ページはあまりに短いため、本書を手に取って少し物足りなさを感じたら参考図書を漁らないといけないだろうが、入門書という位置づけであれば十分その役割は果たせていると思う。

 本書では柳井正がどのような生まれで、なぜユニクロを生み、1代で世界企業に駆け上がっていったのかをまとめられている。読み進めていくうちに、まず会社員としての仕事と経営者としての仕事はあまりに違う印象を抱いた。実際、ユニクロの前身である小郡商事から務めていた社員は成長していくユニクロに対して、商売は分かるが経営は分からないという理由で一線を退いている。ただ、読み進めていくうちに企業としての成功は企業のアイデンティティをいかに確立し、それをいかに消費者に伝えるのかということに尽きていることに気付く。そういった意味では、現場も経営もつかず離れず、一心同体でなければならないため、確かに使う知識は異なるものの、会社文化を軸とした展開という意味で現場も経営も全く別物ではないと感じた。また、本書では出てくる登場人物に何か特別な才能が初めからあったわけではなく、仕事を進めていくうえで困難にぶち当たり、それをいかに乗り越えていくかという経験によって今日の地位を築いていることが何度も書かれていた。


 そういった内容であったため、本を読み終わった後は当然自分の勤める会社のことについて考えてしまう。会社のアイデンティティとは何か、顧客にそれを分かってもらえているのか、経営と現場が離れていないか。ぐるぐると考えていくと、最近の研修で講師の方にパーパス経営の是非を聞いたときの答えをふと思い出した。
 「パーパス経営というのは、世界規模の大きな課題と自社のできることを何度も往復することである。世界規模の問題を、なんでも自社で解決するなんていう発想は間違いである。なぜなら世界にはたくさんの企業があり、自社でできないことも他社ではできる。それなら、自社でできることと世界規模の課題に折り合いをつけていく必要がある。」

 結局のところ、会社の社是であったり目標であったりに対して、自分の仕事というものの立ち位置というのははっきりしないことも多い。だが、そういった漠然とした、大きなものに対して日々自身の仕事との関係性を考えていくことは必要だろう。現時点、自分の思い描く理想の組織であったり、理想の方針であったりを実現する力や権力はないが、そういった日々の積み重ねが将来の糧になるのだと思う。もちろん、その将来まで弊社が存在していればの話だが…


 少し前に、能力給はなぜ失敗するのかという本を読んだのもあり、最近はビジネス関連の頭になっているのでそちらの話ばかりになってしまった。

 この本では現場を理解せずに測定を行ってそれを評価に反映すると必ず当初の方針とは違った結果となるという話である。読解力を身につ着けさせるために国語のテストの点数を測定・評価し、それを教師の給料に反映すると、テスト対策に終始して当初の読解力を身につけるという結果が得られない、といった具合である。なお、この測定・評価が現場組織内で循環する場合には良好な結果となることが多いようで、要は現場を知っている人間が、現場の為に測定結果を使用する限りにおいては十分機能するというわけである。こういった話を見ていても、現場と経営というのはつかずはなれずの関係が大切であり、会社の文化・アイデンティティへの理解度というのは大切なのだと思わされた訳である。


 ちなみに、次に読む本は経営戦略の話か、パワハラ上司の話か、なぜ働くと本が読めなくなるのかという話かのどれかになる。経営戦略の話はまだ読まなくても良い気がするが、お盆は長いのでいったん本棚を見返して数年前に買った本を読もうとしても良いかもしれない。

 ブログについても特に本を読まずに自身の考えを吐き出す場としてこれから活用しても良いかもしれないと思っている。ただ、自身の考えを吐き出す場合には会社の愚痴もかなりの割合で入るはずで、そうなると公開することにリスクがあるだろうから、公開されるかどうかはまた別の話になりそうだ。