考の証

要は健忘録

【積読日記】機能獲得の進化史

 更新をサボり気味だったので、さっと更新して次につなげていきたいと思います。最近は鳩の撃退法を見たり、カイロ大学の本を読んだりしていたのですが、いまいち更新するモチベーションが出てこなかった。モチベーションが出ない、というよりかは感想を出力する気力が湧かなかったという方が正確かもしれない。


 今回は本屋に寄ってイスラム・中東関連の本を1時間近く立ち読みした結果、全く違う分野の本を買ったのでそれを読みました。

 本書では生物の機能(攻撃と防御、遠隔検知、あし、飛行、愛情)に着目して、生物が進化していくときにどのような変化が起こったのかを化石から紐解いている。非常に分かりやすい内容になっている為、読むに際しては特に知識など必要はなく興味があれば十二分に楽しめる内容になっていると感じた。

 攻撃と防御の章では、生命が誕生してからしばらくの間は捕食者が存在しないことから被捕食者が逃走・隠れる必要がなかった一方で、捕食者が登場すると被捕食者はより生存に適した行動を取るようになる。その中でも、海底に潜るという行動が行われることで海底に沈んだままであった栄養が舞い上がり、生命の繁栄に大きく寄与したという話は興味深かった。ナマコのような生物は海底の泥を食べ、有機物を分解して綺麗な砂を吐き出すことが知られているが、被捕食者のいない世界ではそのような生物はいたのだろうか。また、捕食者が現れた始めたのはカンブリア紀以降のことで、硬い組織(殻や牙)が化石として残りやすくなったと言われている。カンブリア紀といえばアノマロカリスなどネットでもよく見る愛らしい姿の生物たちが「カンブリア爆発」という言葉とともに知られているが、近年ではこの言葉があまり使われてなくっているというのに驚いた。というのも、「カンブリア爆発」は生物多様性が爆発的に増大し始めたと考えられていた為に作られた名称ではあるが、化石というものの性質上、硬い組織を持たなかったカンブリア紀以前の生物は化石を残しにくかった。その為、現代の私たちからしたら急に生物多様性が増えたと感じるが、実際は痕跡が残っていないだけであるというのが今の考え方だそうだ。「カンブリア爆発」は今では限定的な意味合いとして「動物の硬組織化の促進」を表している。
 また、こういった本で楽しみの一つは古生物の容姿だろう。本書では古生物の復元イラストが多く挿入されており、図鑑のような楽しみ方もできる。私のお気に入りはカンブロパキコーペである。ネットで容姿は簡単に見られるので調べられるので是非見ていただきたいのだが、この生物は一体どのように生きていたのだろうか、と興味が湧いてくる。他にもヘリコプリオンのような「なぜその容姿になのか?」という疑問の出る生物も多く描かれている。この現代に生きる生物を見慣れている私たちにとっては古生物は不細工でスマートではない印象をどうしても持ってしまうが、それは未来から現代を見た時にも同じことを思うのだろう。そう考えると、今の生物が将来どのような容姿になるのかというテーマも興味深いものだと感じる。

 ここでは取り上げていないが、他章の内容も非常に面白く、化石から得られるわずかな情報を様々な観点から考察し、時には現代の生物の知見を活用しながら古生物がどのように生きていたのかを本書では知ることができる。専門家ではない私たちにとっては想像しかできない領域ではあるが、本書を読むことで更にその想像が膨らみ、かつて地球に存在していた生物に対して思い馳せることができる一冊となっている。