考の証

要は健忘録

【積読7冊目】1%の努力

 以前本屋でぶらぶらしていたとき、ふとひろゆきの顔が目に入ってきた。今帯を見ると、相変わらず煽り力の高いひろゆきが目に入る。普段からビジネス書や自己啓発本はほぼ書いてあることは同じで更に読んでも何もしないのが分かり切っているので買わないのだが、「そういえばひろゆきのこと何も知らないな」と思い、手に取った一冊である。ひろゆきについて知っていることと言えば、2chの管理人であったことと「うそをうそとは~」とか「あなたの感想ですよね」とか言っているよく見る写真くらいのものだ。大体の人がそうだと思う。
 本書の内容と関係ないところでビックリしたのは、まずひろゆきが今フランスのパリに住んでいるということである。4chがあるからアメリカだと思っていたが意外だ。それと、本当どうでもいいことで言えばタバコを吸っていることである。勝手に嫌いだと思い込んでいた。

 さて、本書の内容はなぜ「1%の努力」なのかをひろゆきの生い立ちから語ることで読者と前提条件を合わせてから進んでいく。ビジネス書の内容に加えて、その考えに至るひろゆきの小噺も個人的に非常に面白かった。幼少期は団地暮らしでどうしようもない大人たちを見て、底辺同士地域で支えあいながら成長した話は、私自身親が転勤族で普通のマンションに住んでいたのでそういった価値観があることは知っていたが、やはり実感が湧きにくい一方、世界とはそういうものなのかもしれないとも思う。また、大学時代でのバイトでピザの配達を1時間で普通は3件回るのに対して、抜け道を利用して6件回れるようになった結果、2倍働くのではなくて空いた30分で友達の家でゲームをするなどといった話など、コンプライアンスが厳しくなった今では(程度問題ではあるが)炎上案件だろうと不謹慎ではあるが笑いがこぼれる。また途中で日本とアメリカの市場の違いを説明しているが、アメリカではコミュニティが細かく分断されており、およそ2億人全体にモノやシステムを一度に行き渡らせるのは難しいそうだ。一方で日本は比較的1億人に行き渡らせるのは楽らしく、それ故にモノやシステムの良し悪しよりもいかに流行らせるかがキーポイントらしい。この辺りをひろゆきは「島国」と「大陸」として説明していたが、個人的には「民族(もしくは文化、言語)」といった軸の方が説明しやすいだろうと思う。言いたいことは同じで言い換えているだけであるが。何はともあれ、そういった内容に興味を持っていただいた方にはぜひ本書を読んでほしいので詳細は割愛する。そういったなぜ「1%の努力」であるのか、それをひろゆきの人生観から書かれているのでエッセイとして読むのも面白いのではないだろうか。

 また、最後にひろゆきは「弱者の味方」と宣言していることや、幼少期の暮らしやフランスのホームレスの話を読んでいると、「うしろめたさの人類学」を思い出した。結局、私たちは生活を豊かにしていくにつれ、生活の一部を少しずつ外注するようになり、結果として人間関係すらも外注してお金で解決してしまい、人との距離が離れるからこそその隙間に孤独に悩む人がいる。「うしろめたさの人類学」はエチオピアと日本を行き来した比文化人類学者が書いているが、人との距離が近ければうしろめたさを感じ、貧しい人や物乞いの子供にお金や物を恵むことが当然になるし、精神を病んだ人を排斥せずに地域のコミュニティに受け入れていくと書かれていた。現状、日本ではそういった社会にはならないだろうが、そういった社会を目指すためにどうするのか、そういった話をひろゆきから聞いてみたいと思った。

1%の努力

1%の努力